芸術療法の意義
阪神カウンセリング・ラボでは、「芸術療法」特に、絵画や粘土を使った手法を得意としていますが、実際に、芸術療法を望んで来談される方はまれです。
芸術療法そのもので心理療法を行うというより、療法の過程の中で、自然に使用しながら、心理カウンセリングを進めていくことが好ましいように思われます。
こうした「芸術療法」はどのような点で有効かを整理してみました。
(1)人間の心は必ずしも言語化できるものばかりではありません。そういった心の深層を言語以外の手法を使って、すなわち表現という手法をつかって、無意識レベルから意識レベルまでを表出していくことが可能となります。
(2)絵が完成すると、うれしいものです。また、描いている時も、楽しむことができるのは、浄化作用の働きです。それは自己の精神的な問題を治癒していくためにも有効に働きます。
(3)表現されたものは何らかの形で残ります。主として視覚的にフィードバックできます。ここに映し出された作品を見つめなおしていくことによって、自己を見つめ自己を受け入れ場合によって洞察が得られることもあります。
(4)最初表現されたものが、やがて様相を変えて、ずいぶんまとまった形で表現されることが少なくありません。これは心の変化をそのまま映しだしています。何を考えているのかさっぱりわからず混乱の中にいる間は、表現されたものもそのままの心境が出てしまいます。表現をかさねていくうちに、心が落ち着いてきると、表現そのものがまとまってきます。それは自己実現や人格の統合がなされていく過程であるともいえます。
(5)表現するものが媒体としてあるので、セラピストの側にゆとりのある追体験が可能となります。表現されたものが次々に生まれていきますから、表現しているものもセラピストも、確実な資料を基に関係の流れを言語以上に進展させていく強みも持っています。