うつ病の対策【うつ病と親子関係】
うつ病と親子関係
うつ病や精神的に不安感を持ちやすい人の特徴を見ると、自我の確立が脆弱な場合がよく見られます。
自我の確立を妨げる親の行き過ぎを「三過」と呼んでいます。すなわち、「過保護」「過干渉」「過期待」です。
これらのいずれかで育った子どもは、自分のことを自分で決めるということが出来ないでいます。親は自分の愛情に自信を持っていることがほとんどですから、それが子どもに問題を生じていることに気づかないでいます。
過保護の厄介なことは、親の善意に基づいているということです。
しかし、この善意は子どもの心に起こっていることとは全く別の方向に向いているということです。
過保護は、子どもに、お前の面倒はすべて親が見るからお前は何もしなくてもよい、何も考えなくてもよいというメッセージを送り続けることになります。
そうすると、自分で考えて成功したり失敗したりする経験なしに成長しますから、成人になって、困った問題が起きて、親に相談しても、「もう大人なんだから、自分で考えなさい」とか、「いつまで子どもみたいに親を頼るのよ」とか「もういい加減にしなさい」などと言われて、どうしてよいかわからないまま途方にくれてしまうのです。
過干渉も同じように子どもの心を痛めつけます。
誰でも子どもの頃は、率直な欲求を持って育つものです。ところがその欲求で何かしようと思っても、親の干渉によって子どもの思うようにならない事態が続きます。たまに何か子どもが自分で成し遂げたことについても、親は成果を評価しなかったりバカにしたりすることもあります。そうすると、欲求を持つことが、子どもにとって苦痛になってきます。
やがて、子どもは欲求を持つこと放棄した方が楽だと思うようになって、自分でする極あたりまえなことも二度と自分ではしないと思い込むようになります。
過度な期待も子どもの心をずいぶん痛めつけます。
過度な期待は、子ども自身が自ら考え行動する態度形成を失って、親の期待に応える自分を追い求めるのです。
せいぜい中学生から高校生くらいまでは、親の期待に応えられて過ごしますが、それ以上になってくると、親の期待に応えられなくなってきます。その状態を何とかしようと思っても、期待に応えられているかとか期待に応えられていないのではないかなどということばかりが気になって、どうしたらよいかが見いだせないでいます。
親の期待に応えるという経験は、そのほとんどの子どもに、完璧主義が付きまとってきます。親の期待と完璧主義形成から生まれる子どもの目標基準は極めて高いものになり、それを追い求めるために常に不安感や疲労が蓄積されて参ってしまうのです。
自我確立が形成されない親の態度には、「二重拘束」というものがあります。
親が子どもを叱るとき、心では怒っているのに、顔は笑顔でいるような場合です。
こういう二重の態度を幼い頃から見せられ続けた子どもは、どちらが本当なのかがわからなくなってきます。親は顔で笑っているから大丈夫なんだと思っていると、とんでもない怒りを受け、親が笑顔をしているから、怒っているのだと思って慎重にしていると、なんで楽しまないんだと怒られるようなことを繰り返し体験すると、表情と相手の心情が把握できなくなります。
そうして成長した子どもはが大人になっても、笑顔の裏に隠されている心情を疑って、どう対応したらよいかわからなくなってしまうのです。
こうして社会の中で複雑な人間関係の中で、疲れ切ってしまうのです。