ユングの心理療法１

　ユングはリビドーを、フロイトが主張する性的色彩の濃いものと異なって広い意味で捉えようとしました。フロイトは、リビドーについて、物理的なエネルギーがあるように、人間の精神にもそういったものがあり、それをリビドーと呼びました。

　ユングはスイスの精神科医で、国際的に無援であったフロイトの無意識の世界を国際的に認知した初めての人でした。そのために、フロイトは大いに喜び、ユングをアメリカに呼んで歓迎します。最初は、ユングを、精神分析療法学会の長に据えたほどの仲となります。

　ところが、ユングがリビドーを、人間の長い歴史や神話までに広げる元型によると主張し始めてから、フロイトとユングの激しい論争が始まり、フロイトは強烈な批判をユングに向けます。それを契機にユングは、スイスに戻ります。フロイトの批判が影響して、ユングは、ひどい精神病に陥ります。この時、ユングは患者さんを診断しつつ、自己分析をしながら、自分の病気を克服します。その時の体験が、その後のユングの分析心理学の治療に生かされるようになります。この治癒体験でユングが実施した、描画や造形が、現在臨床で広く行われている、芸術療法・描画療法、箱庭療法などに強い影響を与えます。

　ユングは後年、精神病に陥っていた時に自己を克服した有効な描画の模様が、東洋の仏教で悟りを開くための曼荼羅と同じ絵柄であることに関心を持ち、曼荼羅の研究をします。こうした研究が、ユングの神秘性に結びついていくのでしょう。

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