カウンセリングまでの経緯と所感
2010年6月
30代サラリーマン男性
私がうつ状態だと思い始めたのは、今から数年前のことです。当時の私は、仕事上ちょっとした失敗や対人関係における過度の思い込みが原因となり、自己嫌悪に陥ることがよくありました。仕事に対する自信はほとんどなく、しょっちゅう「自分はダメな人間だ。社会人失格だ」と、思っていました。最終的に会社に出社できなくなり、数か月休業→退職(転職)することになりました。休職する少し前から心療内科に通院し始め、転職後現在も通院を続けています。
心療内科は転職した都合もあり5か所を回りました。現在通院している病院と、その一つ前の病院の先生は、比較的話をよく聞いて下さる方で感謝しています。ただし、話の内容は薬の話か一般的な世話話がほとんどでした。また、どの心療内科も非常に患者さんが多く混雑しているために、比較的話を聞いて下さる2院においても、その時間は短いものです。通院の結果、処方された薬のおかげで睡眠不足は解消されましたが、自信喪失や自己嫌悪はあまり変わりませんでした。
そのような中、私はカウンセリングにお世話になろうと思いました。きっかけの一つは、会社の産業医と保健士に相談したところ、「薬物療法以外にもカウンセリングという方法がありますよ」と、提案されたことです。二つ目は、雑誌PHPに認知療法が特集されていたことです。幸運にも、健康保険組合と保険同人社を通じて、小坂先生を紹介いただき、一年ほど前から1回/月ペースでカウンセリングを受けています。
小坂先生は、相談者に対し色々なアプローチをお持ちのようですが、私の場合は主に認知療法で対応していただくことになりました。カウンセリングでは、私は物事に対する受け取り方や、仕事や自分自身の評価の尺度に問題(認知の歪み)があると指摘されました。具体的には、次のようなことがあげられます。
①仕事の断片的な点だけを評価し、他人は仕事ができるのに自分はできないと感じる。
②自分の仕事に少しでも至らない点があると、ダメ人間だと感じる。
③同僚から話し掛けられないと、強い疎外感を感じる。
毎回のカウンセリングでは、この1カ月の間に遭遇した①~③のようなことを打ち明け、うつになりにくい認知の仕方(歪んでない、普通の人の認知の仕方)をトレーニングしていきました。
途中諸事情により半年ほど中断したため、現時点では実質1年間カウンセリングを受けたことになります。カンセリングの効果として、うつ状態だったのがバラ色のスペシャルな人生に変わったわけではありません。今でも落ち込むことはあります。ただし、以前のようにひどく落ち込むことはなくなりました。特に失敗した時の受け取り方がずいぶん変わり、次のように思えるようになりました。
ⅰ) 100点満点の結果はあり得ない。70点くらいで普通。
ⅱ) 多くの失敗は(自分にも会社にも)大した損害になっていない。(当然反省すべきは反省)
ⅲ)失敗しないとわからないこともたくさんある。特に製品開発では失敗こそが経験。
また、ちょっとした成功や失敗で右往左往しなくなり、冷静に客観的に物事を捉えられるようになってきたこともカウンセリングの効果だと思います。またつい最近、新規プロジェクト人員の社内公募に応募したところ、競争率約5倍だったにもかかわらず、採用してもらえることになりました。チャレンジ精神を買われたようですが、数年前のうつ状態の時からすれば考えられないことです。
企業が繁栄するためのポイントは多岐にわたると思いますが、各従業員が持っている最大のパフォーマンスを引き出すことも重要なポイントだと思います。松下幸之助曰く、「松下は人を育てる会社でございます。その副産物として電気製品の販売もいたしております」と、あります。まさしく「企業力=人間力」ということを訴えているのだと思います。OJTなどによる表面的な仕事を覚えることも大切ですが、心身的・精神的な問題で今一つパフォーマンスを発揮できない従業員を、最大限のパフォーマンスを発揮できる従業員に変貌させることも大切です。もし、認知が歪んでいるがためにパフォーマンスを発揮できていない従業員がいるのであれば、カウンセリング(認知療法)は、とても有効な手段だと思います。また、そのような従業員は、世の中に意外と多いのではないかと思います。