うつ病の背景にある完璧主義の限界

   うつ病や不安障害のもとになっている「完璧主義」はどのように生まれるかというと、成育歴から生じます。長くカウンセリングを担当してきた体験からみると、うつ病になるような人は思考力があって賢明な人が多いということに気づきます。優秀で賢いだけに、親の期待に応えられる結果を生みだすことは案外たやすいのです。そうした子供に対して過剰な期待をかける親子関係を通して、親の期待に応えようと必死になります。常に優秀な成績を収めてきた子供は、それまでは、その期待にこたえる努力をすることによって、十分な評価を得、活躍していくことができ、そのことで自信もつけていきます。小学生、中学生あたりまでは、ほとんど問題なくやってこれます。やがて思春期に入ったり、大人の世界に入ったりすると、親の期待に応えるという対応や問題処理の仕方だけでは、いかんともしがたいことが増えてきます。中学校くらいまでのテスト勉強なら、他者の期待に応えるくらいの完璧な成績、１００点くらいは取れます。このように学校の成績が良いとかテストができるといった人間評価のレベルは、人間そのものの世界の大きさから比較したら、微々たるものです。子供の世界ではせいぜい学校の成績くらいの評価で済むわけですから、十分成功した気分でいられるはずです。ところが、自己が主体となって、自分の責任で生きなければならないような大人の世界になると、学校のテストで１００点を取るような問題解決方法では、やっていけないことが多くなります。

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