うつ病の背景
うつ病は思考障害である、と言ったのは、認知行動療法の創始者、アーロン.T.ベック教授です。
起こった状況を、合理的に認識することができれば、それほど精神的に揺らぐことは少ないのですが、うつ病になりやすい人は、その状況を見誤ってしまいます。そして、必要以上に、不安に陥ったり悲しんだりします。その結果、いたるところで繰り返す状況の不合理さのために、いかんともしがたい苦境に陥り、心の病気を引き起こしてしまいます。これがうつ病の背景です。したがって、うつ病を解決していくために、認知療法が生まれ、行動療法の有効な技法を組み入れて、認知行動療法が発展しました。
今では、この認知行動療法は、l心の病気だけでなく、健康な人の行動のあり方を修正したり、感情調節のためや一般の人間関係を調整するためにも応用されています。
人間が考えるということは非常に大切な行為なのですが、問題なのは、その思考が、非合理的であることなのです。そうすると、うつ病になりやすい人は、常に考えて過ごしますから、その時間はいつも、悲しく憂うつ感にさいなまされて過ごすことになります。延々と考えて過ごすと、疲れてしまいます。これが精神的疲労です。疲れ切った状態でさらに疲労するような考えを押し広げていきますから、うつ病にまで発展してしまうのです。