ある状況に対して、すっと自然に浮かんでくるイメージや思考を、自動思考と呼んでいます。
これは、だれでも持っていますが、その人の生い立ちや性格などで、まったく同じ状況であっても、そのイメージや思考は異なっています。
たとえば、仕事で、上司に叱られた場面を想像してみてください。
昨日Aさんは、上司に、「この印刷のコピーを明日の朝までとって、整理しておいてくれ」と、頼まれました。
Aさんは、「はい」と、返事をして、他の仕事に追われていました。翌日上司がコピーの整理を提出するように言われましたが、Aさんはすっかり忘れていました。
そのため上司はかんかんです。
「頼んだものはしっかりやっておけよ」
そうおこられたAさんは、すっかりしょげてしまいました。
そして、こんな風に思考を広げていくのです。
「ああ、こんなことを忘れるなんて。仕事が忙しかったとはいえ、言い訳にならない。こんなこともできない私は、記憶力が劣っているに違いない。こんな集中力のない私は、この仕事を続けていてよいものだろうか。たぶん、私は、だめな人間なんだ。職業人として失格だ。私は何て情けない人間なんだ」
このように、ある状況で、すっと浮かんでくる思考を、自動思考と言います。
この自動思考が、否定的、悲観的であるために、Aさんの苦しみが始まります。ことがこれだけではありません。
このようなことがいつも続けて起こすので、ちょっとしたストレスや圧力でも参ってしまう不安定な状態に置かれてしまうのです。
果たして、コピーを忘れたことが、これほどAさんの人格にかかわるほど重要な出来事だったのでしょうか。
事実は、Aさんが上司から頼まれたコピーを忘れたこと。それを上司が、叱ったことです。
それは、Aさんが仕事のできないダメ人間であることを言ってるのではなく、頼まれた仕事を忘れるなという不始末を叱っているだけです。