境界性人格障害
境界性人格障害(きょうかいせいじんかくしょうがい、Borderline Personality Disorder,BPD)は、境界型人格障害とも呼ばれ、思春期または成人期に生じる人格障害である。不安定な自己-他者のイメージ、感情・思考の制御の障害、衝動的な自己破壊行為などの特徴がある。DSM-IV-TR日本語版2003年8月新訂版より、邦訳が境界性人格障害から境界性パーソナリティ障害と変更されている。また、ボーダーラインと呼称される事もある。
旧来の疾患概念である境界例と混同されやすく、一般的に境界例と呼称される場合、境界性人格障害を指すことが多い。
概説
近年患者数が増加しているともいわれ、医療費への影響や自己破壊的な行動による生産性の低下などから経済へ与える影響も大きい。主に精神力動的精神医学からの研究がなされているが、生物学的な研究は未だ少ない。治療法は精神療法を主体とし、薬物療法を併用することが多い。ICD-10では情緒不安定性人格障害、境界型と呼ばれている。
この言葉は神経症の症状と精神病(特に統合失調症)の症状の境界の症状という意味であった。しかし近年では気分障害(感情障害)との関連も疑われている。しかし、Koenigsbergらが1999年に発表した論文によると、他の人格障害に比べると境界性人格障害と気分障害(感情障害)の関連は特別なものではないとされている。
疫学調査では、人口の0.7〜2.0%程度に存在すると言われている。[要出典]気分障害(感情障害)や物質関連障害などを合併することも多い。また抱えている不安感を解決させるために、自我の内部で自己の評価を上げることもあるため、自己愛性人格障害とセットで扱われることも多い。また、対人関係の不安定さを回避しようと、引きこもりのような状態になることもあるため、回避性人格障害(不安性人格障害)と診断されてしまうことも多い[要出典]。経過の途中でミュンヒハウゼン症候群の自傷を見せるなどの行為から自殺に至る例も珍しくない。
診断基準
DSM-IV-TRの診断基準では、以下9項目のうち5つ以上を満たすこととなっている。『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(著者:American Psychiatric Association、翻訳:高橋三郎、大野裕、染矢俊幸、出版社:医学書院、ISBN 4260118862) より引用。
対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。
1.現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気も狂わんばかりの努力(注:5.の自殺行為または自傷行為は含めないこと )
2.理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式
3.同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観
4.自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食い)
5.自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為のくり返し
6.顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)
7.慢性的な空虚感
8.不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかをくり返す)
9.一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状
DSMの診断基準の問題
DSMにおいては、各疾患においてA・B・Cの診断基準が示され、「A~C全てが当てはまる場合」その精神疾患であると診断される。 A・Bは具体的な病像が列挙されるが、C基準は「その症状が原因で職業・学業・家庭生活に支障を来している」となっている。C基準が無ければ、世間の誰もがDSMに挙げられたいずれかの精神疾患の基準を満たしてしまうからである。特に人格障害においてはその傾向が強い。
本書には、「DSM-IVは、臨床的、教育的、研究的状況で使用されるよう作成された精神疾患の分類である。診断カテゴリー、基準、解説の記述は、診断に関する適切な臨床研修と経験を持つ人によって使用されることを想定している。重要なのは、研修を受けていない人がDSM-IVを機械的に用いぬことである。DSM-IVに取り入れられた各診断基準は指針として用いられるが、それは臨床的判断によって生かされるものであり、料理の本のように使われるものではない」と書かれており、非専門家による使用を戒めている。
原因
近年の研究結果から、次のものが原因として考えられている。
・先天的異常-生理学的な脳の脆弱性
・幼少期の体験-身体的虐待、性的虐待、過干渉、機能不全家庭などの経験
ウィキペディア参照:https://ja.wikipedia.org/
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