身体醜形障害
身体醜形障害(しんたいしゅうけいしょうがい、Body Dysmorphic Disorder:BDD)とは、自分の身体や美醜に極度にこだわる症状である。実際よりも低い自己の身体的なイメージが原因である。一種の心気症や強迫性障害とされる。重度の場合は統合失調症ともなる。俗に醜形恐怖また醜貌恐怖といわれる。また非常に強い強迫観念から強迫性障害と深い関連性があり、強迫スペクトラム障害にある。その強い強迫観念から身体醜形障害はうつ病も併発する割合もかなり高いとされる。また欧米では身体醜形障害(BDD)と独立だった専門分野として治療されているようだが、本国日本での治療分野では身体醜形障害はまだ独立だって居らず、強迫性障害や統合失調症の前駆症状と診断されているケースが多いようである。当然、強迫スペクトラム障害の伏線上にある純粋な身体醜形障害としての診断もある。
概要
「醜形恐怖」という言葉が19世紀にこの病気について初めて発表したイタリア人医師の名付けた原語を日本語訳したものとして作られ、長らくこの用語が日本では一般的であったが、近年患者が顔だけではなく身体全体を気にしだしたため「身体醜形障害」と呼ばれることも多くなった。近年、アメリカで研究が進んでいる。1995年に発表されたアメリカの調査によると、有病率は1%であるとされているが、患者は自身の身体醜形障害を医師にも言わない傾向が多いため、実際にはより多数の患者がいるのではないかと推測されている。
日本では1990年頃(特に後半)から多くなりだした。この内2割は引きこもりのような状況になるとされる[要出典]。整形をする人も多いが、実際には思い込みに過ぎないため、満足な結果が得られることは少なく、結果的に逆に顔を崩してしまうことさえある。
この障害を持つ場合には、1日に何時間も自身の肉体的な欠陥について考えるようになり、極端に社会から孤立してしまうとされる。その結果として、学校を退学したり、仕事を辞めたりすることがある。また友人を作らなくなったり、離婚をしたりし、最終的には自殺をするに至ることもあるとされる。
男性の場合、第二次性徴によって男らしく変化した部分を嫌い、幼児期のままの自分でいたいと思う傾向が強いとされる。また、女性の場合は、母親や姉妹など周囲の身体に対する優劣を意識する傾向が強いとされる。顔自体に限っていえば男性に多いが、身体全体に亘る場合は女性に多いとされる。
醜形障害者の割合に男女比の差はあまりないとされるが、とらわれる箇所は男女個々様々で体全体にいたる(頭蓋骨(頭)の大きさ、体型、肌、髪、爪、目、鼻、耳、口、歯並び、顎、体毛、性器、身長、体重など)。
醜形障害者はかなり偏ったボディーイメージを持っている(極端な体重(低体重・モデル体重など)へのこだわりなど)。そういった意味では摂食障害とも関連性はある。もっとも体重だけではなく、一度鏡で見た顔や容姿にいたるイメージへも確固たる真のイメージを持ち難いともされる。それゆえ、何度も鏡を確認するものと思われる。
身体醜形障害の状態があまりにも長く続く場合は、持続性妄想性障害(統合失調症など)にも関連する。その際診断の結果、統合失調症とされる場合も少なくない。それ故、精神科などの比較的大きな医療機関を訪れた際に、対人恐怖や身体醜形障害と診断されることは少なく、強迫性障害や統合失調症となるケースが多い。
醜形障害者の日常生活における困難は、鏡などの反射物(鏡、ガラス、水面、なべのふた、スプーン、ペットボトル、食器類など)に映る顔全体の影形やその姿であり、その対象物を何十分、何時間という単位で目で確認し続けるという強迫性障害でいう強迫確認または強迫行動によって支配される苦しみや苦痛である。また外出した際は他人の視線(顔や容姿全体、こだわっている箇所)を意識しすぎて、ショーウィンドーのガラスや車のガラス、バックミラーなどに自分の顔や容姿を映し様々な角度から自分のこだわっている箇所を確認し続けるという行動をとる。その姿が自分の思っていた顔や容姿とのイメージと合致した場合は、気分が高揚し安心感を持ち、かけ離れていた場合は酷く落ち込み、目的だった事柄や場所に行けず冷や汗を掻いて引き返してくることもある。また外出時は自分の顔・容姿のこだわっている箇所を他人と必死に比べようともする。
また反射物に限らず、写真や映像(カメラやビデオ)に撮られることも嫌い、その自身が写った写真や映像から目を背けたり写りたがらない。写真や映像に写った自身の顔・姿のイメージが自己のイメージと合致すれば上記の様な心理状態になり、違った場合は落胆し鬱になったり、写真の場合は破り捨てることも見受けられる。その結果、履歴書などに載せる証明写真を撮るのに支障を来す場合がある。
また、醜形障害者は鏡やガラスなどに映った自分を見続ける確認行動がある裏側、必死に鏡やガラスなどの反射対象物を避け、なるべくこだわっている箇所を映らない、映さない、確認しないなどといった極端な反面も持ち合わせていることが多い。なぜ、その両面を持ち合わせているのかは具体的には分からないが、強迫性障害で言う強迫確認の負のループに自身の大事な時間を費やされたくない、その確認しているさまを他人に見られるのが恥ずかしい、奇妙な行為だと思われるのが怖い、またその確認でこだわっている箇所を見てしまったための落ち込みの不安で、恐怖と絶望の渦に陥りたくないという心理的要因が働くのではないかと思われる。そしてこの二つの局面を持ち合わせている者もいれば、そうでない者もいるようである。
醜形障害者は妄想的に確信を抱いたとらわれのパターンと、元々(生まれつき)の細かい欠陥(例えば、髪の毛が柔らかく細く頭髪が元々薄い傾向や、成人して止ってしまった身長などに対する変えられようのない事実)にとらわれてしまうパターンとがある。後者は投薬治療では中々改善しない場合が多く、10年近く症状で悩まされる場合も多い。いずれにしても、細かい顔や体に対する欠陥や妄想的とらわれが身体醜形障害の特徴である。
自分の容姿にとらわれるあまり、家族にまでそのとらわれ箇所の確認を要求する(どのように思い、感じるか)家族巻き込み型もこの病の典型である。その結果、家族のいい回答が得られずに(正しい返答がない、もしくは家族として思い合ってか言葉に表しにくいため)家庭内暴力にまで至るケースもある。
またこれら反射物による恐怖を発端とする忌避行為により、日常生活に多大なる影響を与える。特に就労に関してこの問題は大きい。例を挙げれば、反射するモニターを使用する光沢液晶やCRTの仕事を忌避したり、サイドミラーを恐れ運転免許が取れなかったり等致命的な支障を就労においてきたす。自分の顔への恐怖は、裏返せば他者の視線への恐怖であり、面を向かってのデスクワークや会議、及び面談等もまともに正対して視線を合わすことさえ困難を極める。結果的に、能力的にできる職種であっても、醜形恐怖が先行するあまり、自ら職業の選択を狭め、最悪何も仕事を選べないという状況になり得る。プライベートにおいてもそのような状態では恋愛はおろか友人関係を築くのも著しい困難を生じる。
原因としては、先天的なこだわりやすい性格や完全志向、強迫神経症に通じる確認行為等の素因も軽視できない一方で、人とのコミュニケーションを上手く取れない自己の内面の脆さを違う形で、つまり外見の劣等へ形を置き換える事で、無意識的にバランスを取っている側面もある。醜形恐怖の人達に、コミュニケーションスキル不足や対人恐怖を含む社会不安症を併発しやすいのもその影響が考えられる。自己へ自己へと意識が集中しすぎ自身で、完璧なこうであれねば、という枠組みを形成してしまうのが根底にある。外界(他人)への意識を拡大させると共に、自分への美醜のこだわりより先に対人スキルを含む内面精神に対する誤った認識の確認、再生、充実が結果的にこれらの強迫観念を解決させる一助になりえる。
* マスメディアにおける時代の美醜の価値観も関連する。
* 容姿だけではなく、社会的に非常に強いコンプレックスを抱く者もある。
* 自尊心も極端に低い傾向にある。
* 長期による深刻な悩みの末、自己同一性に欠ける問題もある。
* 身体表現性障害と大まかに括れる事が出来る。
* しばしば、ノイローゼ的になりパニック発作を起こす場合もある。
* 強迫性障害からの視点では脳内伝達物質のセロトニンの異常と、眼窩皮質という箇所の異常だともいわれる。
* 身体醜形障害は自己愛とも深い関連があり、自己愛性人格障害にも少なからず関連性がある。
* 森田療法や暴露反応妨害法なとが有効とされている。
* 身体醜形障害の自己対処法として、とらわれている箇所を鏡で重視するのではなく、鏡で見てとらわれている箇所から容姿全体へと視点をなぞり移すようにして行き、最後に容姿全体へと視点そのものを変えて行くと良いとされている。
* 醜形恐怖症は自己臭恐怖症とも深い因果関係があり、しばしば両方を併発する。根底には他者に受け入れられたい迷惑をかけたくないという考えがある。
* 醜形恐怖は精神病というより元来持つ性格から発している部分が大きい、その際たるものが「完璧主義」である。醜形恐怖が難治といわれるのは、先天的あるいは、長年積み重なった性格・気質によるためでもある。
* 最近のプチ整形を筆頭として美容整形の浸透が醜形恐怖を更に根深い問題とさせている。
身体醜形障害の治療は心療内科、クリニック、精神科などを受診した場合は向精神薬のクロミプラミン(三環系抗うつ薬)やフルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンなどのSSRI、また抗不安薬(マイナートランキライザー)であるブロマゼパムや、眠りが浅い場合はフルニトラゼパムなどの睡眠導入剤の処方が主流である。また比較的症状が重い場合は抗精神病薬である、ハロペリドール(メジャートランキライザー)、ペロスピロン、クエチアピン、アリピプラゾール、リスペリドン(非定型抗精神病薬)などが処方として挙げられる。
ウィキペディア参照:https://ja.wikipedia.org/
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