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用語集

アスペルガー障害

アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger syndrome: AS)は、社会性・興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害である。各種の診断基準には明記されていないが、全IQが知的障害域でないことが多く「知的障害がない自閉症」として扱われることも多い。なお、世界保健機関・アメリカ合衆国・日本国などにおける公的な文書では、自閉症とは区別して取り扱われる。精神医学において頻用されるアメリカ精神医学会の診断基準 (DSM-IV-TR) ではアスペルガー障害と呼ぶ。

対人関係の障害や、他者の気持ちの推測力など、心の理論の障害が原因の1つであるという説もある。特定の分野への強いこだわりを示したり、運動機能の軽度な障害も見られたりする。しかし、カナータイプ(伝統的な自閉症とされているもの)に見られるような知的障害および言語障害は、比較的少ない。

概要

アスペルガー症候群の定義や「アスペルガー症候群と高機能自閉症は同じものか否かについて」は、諸説あるが、高機能自閉症(知的障害のない、あるいはほとんどない自閉症)と区別されることは少なくなってきている(アスペルガー症候群は、知的障害の有無を問わず、言語障害のない自閉症を指すという研究者もいる)。このような概念の未整理については議論や批判があり、それを受けて2013年発行予定のDSM-Vの草案ではアスペルガー症候群は独立した診断分類としては削除されている。

自閉症の軽度例とも考えられているが、知的障害でないからといっても、社会生活での対人関係に問題が起きることもあり、知的障害がないから問題がほとんどないとすることはできない。知能の高低については、相対的に低いよりは高い方が自活能力が高いとみなされるが、成人の場合、知能の高さは必ずしも安定就労に結びつかないという調査報告もある[3]。これは、アスペルガー症候群としての特性の数々は知能の高低にかかわらず就労の場において(しばしば重大な)障害となるのに、知的障害者としての庇護が受けられる者にくらべて、一見定型発達者と区別がつかない知的障害のない者への理解やサポートは、ほとんど進んでいなかったからである。日本では従来、アスペルガー症候群への対応が進んでいなかったが、2005年4月1日施行の発達障害者支援法によりアスペルガー症候群と高機能自閉症に対する行政の認知は高まった。しかし、依然社会的認知は低く、カナータイプより対人関係での挫折などが生じやすい環境は変わっていない。

また、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)や学習障害(LD)などを併発している場合もある。このような合併障害があることと、「アスペルガー」や「自閉症」という言葉には偏見があることなどを理由に、まとめて「広汎性発達障害(PDD)」や「発達障害」と呼ぶ医師も増えている。なお自閉症スペクトラムの考え方では、定型発達者とカナータイプ自閉症の中間的な存在とされている。

特徴

自閉症スペクトラムに分類されている他の状態同様、アスペルガー症候群も性別との相関関係があり、全体のおよそ75%が男性である。ただし、症状が現れずに潜在化(治癒ではない)する場合も勘案せねばならず、この数値にはある程度の疑問も残る。

コミュニケーション上の主な特徴

非自閉症の人(NT:neurotypical, 典型的な精神の人)は、他者の仕草や雰囲気から多くの情報を集め、相手の感情や認知の状態を読み取れる。しかし自閉症の人はこの能力が欠けており、心を読むことが難しい(心の理論)。そのような、仕草や状況、雰囲気から気持ちを読み取れない人は、他人が微笑むことを見ることはできても、それが意味していることが分からない。また最悪の場合、表情やボディランゲージなど、その他あらゆる人間間のコミュニケーションにおけるニュアンスを理解することができない。多くの場合、彼等は行間を読むことが苦手あるいは不可能である。つまり、人が口に出して言葉で言わなければ、意図していることが何なのかを理解できない。しかし、これはスペクトラム状(連続体)の特徴である。表情や他人の意図を読み取ることに不自由がないアスペルガーの人もいる。彼らはしばしばアイコンタクトが困難である。ほとんどアイコンタクトをせず、それをドギマギするものだと感じる場合が多い。一方、他人にとって不快に感じるくらいに、じっとその人の目を見つめてしまうようなタイプもいる。相手からのメッセージ(アイコンタクトなど)が何を示すのか、彼等なりに必死に理解しようと努力するのだが、この障害のために相手の心の解読が困難で、挫折してしまうパターンが多い。例えば、初対面の人に挨拶をする際に、社会的に受け入れられている方法で自己紹介をするのではなく、自分の関心のある分野に関して一人で長々と話し続けるような行動をとる場合がある

コミュニケーション上の特徴が障害とは限らない

症候群という表現は、アスペルガーの人は障害者(異常)で、その他の者は定型発達者(正常)というように感じる。しかし、特徴の見かたを変えると、客観的で、事実を正確に理解して表現することに長けているともいえる。以下に挙げられている「言葉を額面どおりに受け取る」や「些細なことにこだわる」という特徴も「厳正に規則を守る」と言い換えることができる。例えば、パソコンのように順序だったものや規則的なものに興味を持てば、才能を開花させることも可能である。また、「行間を読むことが苦手」というのは、行間を読まないコミュニケーション方法ということである。それは「行間を読むコミュニケーション(アスペルガー以外の多数派)」に対しての「少数派の方法」という関係である。

つまり、少数派であるために、多数派の人と自由にコミュニケーションが取れない、或いはコミュニケーション方法の違いを理解されないという問題が、社会生活での障壁となりやすい。

主な問題点

アスペルガーの人は、多くのアスペルガー以外の人と同様に、またはそれ以上に強く感情の反応をするが、何に対して反応するかは常に違う。 彼等が苦手なものは、「他人の情緒を理解すること」であり、自分の感情の状態をボディランゲージや表情のニュアンス等で他人に伝えることである。多くのアスペルガーの人は、彼等の周りの世界から、期せずして乖離した感覚を持っていると報告されている。

例えば教師が、アスペルガーの子供に(宿題を忘れたことを問いただす意味で)「犬があなたの宿題を食べたの?」と尋ねたら、その子はその表現が理解できなければ押し黙り、教師に自分は犬を飼っておらず、普通犬は紙を食べないことを説明する必要があるのかどうか考えようとする。つまり教師が、表情や声のトーンから暗に意味している事を理解できない。 先生は、その子が傲慢で悪意に満ち、反抗的であると考え、フラストレーションを感じながら歩き去っていくかもしれない。その子はその場で何かがおかしいとフラストレーションを感じながら、そこへ黙って立ち尽くすことだろう。

アスペルガーの子供は、言葉で言われたことは額面どおり真に受けることが多い。親や教師が励ますつもりで「テストの点数などさほど大事ではない」などとあまりきれい事ばかり聞かせたり、反対に現実的なことばかり教えたりすると、真に受けてしまい、持つべき水準からかけ離れた観念を持ってしまう危険がある。彼らは、“大人の発言には掛け値がある”という疑いを持ちにくく、持ったとしても、はたして掛け値がどのくらいなのかを慮ることが困難であるため、発言者の願望を載せて物事を大げさに表現すると狙った効果は効き過ぎることになる。この傾向を助長する要因の一つに、通常であれば日常生活で周囲の人の会話などから小耳に挟んで得ているはずの雑多な情報を、アスペルガーの人は(アスペルガー特有の“興味の集中”のため)“聞こえてはいる”ものの適切に処理することができないことが考えられる。

限定された興味、関心

アスペルガー症候群は興味の対象に対する、きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがある。 例えば、1950年代のプロレスや、アフリカ独裁政権の国歌、マッチ棒で模型をつくることなど、社会一般の興味や流行にかかわらず、独自的な興味を抱くケースが見られる。輸送手段(鉄道・自動車など)、コンピューター、数学、天文学、地理、恐竜、法律等は特によく興味の対象となる。しかし、これらの対象への興味は、一般的な子供も持つものである。両者の違いは、その異常なまでの興味の強さにある。アスペルガー児は興味対象に関する大量の情報を記憶することがある。

また一般的に、順序だったもの、規則的なものはアスペルガーの人を魅了する。これらへの興味が物質的あるいは社会的に有用な仕事と結びついた場合、実り豊かな人生を送る可能性もある。 例えば、コンピューターに取りつかれた子供は大きくなって卓越したプログラマーになるかもしれない。それらと逆に、予測不可能なもの、不合理なものはアスペルガーの人が嫌う対象となる。

彼らの関心は生涯にわたることもあるが、いつしか突然変わる場合もある。どちらの場合でも、ある時点では通常1~2個の対象に強い関心を持っている。これらの興味を追求する過程で、彼等はしばしば非常に洗練された知性、ほとんど頑固偏屈とも言える集中力、一見些細に見える事実に対する膨大な(時に、写真を見ているかのような詳細さでの)記憶力などを示す。ハンス・アスペルガーは、彼の幼い患者を『小さな教授』と呼んでいた。その13歳の患者は、自分の興味を持つ分野に網羅的かつ微細な、大学教授のような知識を持っていたからである。

臨床家の中には、アスペルガーの人がこれらの特徴を有することに全面的には賛成しない者もいる。たとえばWing と Gillberg はアスペルガーの人が持つ知識はしばしば理解に根付いた知識よりも表層だけの知識の方が多い場合がある、と主張している。しかし、このような限定はGillbergの診断基準を用いる場合であっても診断とは無関係である。

アスペルガーの児童および成人は自分の興味のない分野に対しての忍耐力が弱い場合が多い。 学生時代、「とても優秀な劣等生」と認識された人も多い。これは、自分の興味のある分野に関しては他人に比べて遙かに優秀であることが誰の目にも明らかなのに、毎日の宿題にはやる気を見せないからである(時に興味のある分野であってもやる気を見せない、という意見もあるが、それは他人が同じ分野だと思うものが本人にとっては異なる分野だからだと思われる。例えば、数学に興味があるが答えが巻末に載っている受験数学を自分で解くことには興味が持てない、日本語の旧字体に興味はあるが国語の擬古文の読解問題には興味が持てない、など)。ノートやテスト用紙に文字を手書きすることを、とても面倒で苦痛に感じる子供もいる。一方、反対に学業において他人に勝つことに興味を持ったために優秀な成績を取る人も居り、これは診断の困難さを増す。他人に自分の主張を否定されることに強く嫌悪感を覚えるという人もいる。このことは学校などで学習上の大きな障害となる。例えば、教師が生徒にいきなり答えさせ、生徒:「これは○○だと思います」先生:「 違うよね、これは××だよ」というように、否定して答えやヒントを教えるような方法は、アスペルガーの人には相当な苦痛となる。 しかし、多くの成人は、忍耐力のなさと動機の欠如などを克服し、新しい活動や新しい人に会うことに対する耐性を発達させている。

アスペルガーの人は正常な知能と社交能力の低さを併せ持つと考える人もいる。

このことは子供時代や、大人になってからも多くの問題をもたらす。 アスペルガーの子供はしばしば学校でのいじめの対象になりやすい。なぜなら彼等独特の振るまい、言葉使い、興味対象、身なり、そして彼等の非言語的メッセージを受け取る能力の低さを持つからである。彼等に対し、嫌悪感を持つ子供が多いのもこのことが要因だろう。このため教育の場である学校において、今後はサポート体制の確立や自立の支援、他の子供への理解を深めさせる、といった総合的な支援策が必要になるだろう。

「アスペルガー症候群」という一つのカテゴリーであっても、人によって障害の度合いは千差万別である。例えば、学校の友達と上手く話せたり、話を上手くまとめられるなど、至って軽度な場合もある。また、上手く話せず、それでもよい友達に巡り会えたから必死で耐えている、というように、自閉度が中度–重度なこともある。 この障害は、カナータイプの自閉症などと違い、一見「定型発達者」に見えるために、周りからのサポートが遅れがちになったりすることが問題となっている。

アスペルガーの人は他の様々な感覚、発達、あるいは生理的異常を示すこともある。その子供時代に細かな運動能力に遅れをみせることが多い。特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くかもしれない。手をぶらぶら振るなど(常同行動)、衝動的な指、手、腕の動きもしばしば認められる。

アスペルガーの人は感覚的に多くの負荷がかかっていることがある。音、匂いに敏感だったり、あるいは接触されることを嫌ったりする。例えば、頭を触られたり、髪を触られるのを嫌う人もいる。音に神経質過ぎて不眠を訴える人も多い。これが子供の場合、教室の騒音が彼等に耐えられないものである場合等、学校での問題をさらに複雑にすることもある。

別の行動の特徴として、やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語(エコラリア)と呼ばれる症状を示す場合がある。

ウィキペディア参照:https://ja.wikipedia.org/

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その他の症状

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