カフェイン中毒
カフェイン中毒(カフェインちゅうどく、caffeine addiction / caffeine intoxication)はカフェイン(C8H10N4O2)によって引き起こされる中毒。カフェインの引き起こす症状は、カフェイン自体が持つ神経毒性によって引き起こされるものである。 長期に亘りカフェインを摂取し続けることによって起きる慢性中毒と、一度に多量のカフェインを摂取したために起きる急性中毒がある。うち急性のものはDSM-IV-TRではcaffeine intoxicationとして305.90に分類される。
コーヒー、コーラ、栄養ドリンク、緑茶、紅茶、ココアなどカフェインを含む食品の常用によることが多い。また、カフェイン錠剤などの過剰摂取によっても急性中毒を起こす。
中毒症状
急性中毒
一般的な成人で1時間以内に 6.5 mg/kg 以上のカフェインを摂取した場合は約半数が、3時間以内に 17 mg/kg 以上のカフェインを摂取した場合は 100 % の確率で急性症状を発症する。後者の場合、重症になる確率が高い。ただしこの症状は一時的に起きるものであり、麻薬や覚せい剤のように不可逆性ではない(後遺症をきたさない)。カフェインが体内から分解・代謝され、効力を失えば症状は改善する。ただし、神経圧迫による視覚異常や聴覚異常は確認されている。カフェインを分解する酵素(CYP1A2やモノアミン酸化酵素)を阻害する薬物などと併用した場合、カフェインの代謝が遅れ、症状が長引いたり悪化することがある。また、200 mg/kg 以上摂取した場合、死に至る。
精神症状
緊張感・感覚過敏・落ち着きがなくなる、多弁・不安・焦燥感・気分高揚・一時的な不眠症を生じる。重症になると、精神錯乱・妄想・幻覚・幻聴・パニック発作・取り乱す・衝動性などが現れ、酷いと自殺行為に及ぶ場合まである。神経質な人やうつ病・不安障害・パニック障害などを患っている人は重症化しやすく、症状の悪化をきたしやすい。
身体症状
胃痛・胸痛・吐気・嘔吐などの消化器症状、心拍数の増加(時に不整脈)・心筋収縮の促進・血流増大・動悸・呼吸が速くなる・頻尿など、循環器の症状。また一時的な筋骨格の持久力増進・振戦・むずむず感を生じる。重症化すると痙攣を起こす。また、瞳孔拡大や顔が赤くなったり、頭痛を起こす。
慢性中毒
慢性中毒は、常習的にカフェイン飲料やカフェイン製剤を摂取し続けた場合に起こる。例えるならアルコール依存症のようなものである(例として、一日にコーヒーを最低3杯飲まないと落ち着かない、という人は慢性中毒と見てよい)。酒・タバコ・覚せい剤などとは異なり、強い精神依存・肉体依存・耐性の形成が起こらないのが特徴である。ただし多量に取り続けると禁断症状として頭痛や抑うつなどが短期間生じる場合がある。
中毒に対する処置と治療
まず、急性中毒を起こした場合である。カフェインには特異的な解毒剤や拮抗薬、血清がないため、対症療法を行って時間と共に回復を待つしかない。重症に至らず、中毒者の心身から不快感が消失したならば経過観察と休養で良い。多くの場合、精神的・肉体的に過労状態となっていることが多いため、栄養を取って心身を休ませることが第一である。重症で緊急を要する場合は救急病院に搬送後、ICU又はCCUにて全身管理を行い、各致死的症状に対応しなければならない。胃洗浄が有効な場合もある。危機的中毒量を摂取している場合、全身痙攣や重度の不整脈、精神運動の過剰亢進で錯乱や過呼吸を起こしている事が多い。まず横隔膜の痙攣による呼吸不全を防ぐため、筋弛緩剤や抗けいれん薬(バルビツレート)の投与と酸素吸入で急速対応する。また、重い不整脈に対しては心拍をモニターし、心室細動に注意を払う。また、2次性の精神症状(2次性とは、麻薬などの直接的な精神刺激による症状である1次性精神症状に対して、間接的に引き起こされた精神症状を比較して指す)を緩和する。中毒患者にとってこの症状が最も不快であることが多い。ジアゼパム静注などで緩和すると良い。それでも十分な効果を得られない場合は、更にフルニトラゼパムなどを静注する。この際、ドパミン拮抗型の鎮静剤(定型抗精神病剤)やバルビツレートは使用しない。バイタルが正常に戻り、医師が大丈夫と判断した場合は対処療法は終了するが、入院して十分に体を休め、点滴静注で栄養補給や心身のバランスを整えたほうが良い。慢性中毒者(依存者)に対しては、カフェイン飲料を断つのが一般的。アルコールや覚せい剤と違ってカフェイン飲料の中断は比較的容易に行える。禁断性の片頭痛に対しては対処薬で対応できるが通常短期間(数日)のうちに全て治まる。
薬理
カフェインはアデノシン受容体に拮抗するために覚醒作用を示す。尚、神経細胞に対して直接刺激するのではなく、脳中枢の抑制回路を脱抑制することにより覚醒作用を表すため、覚せい剤とは違って間接的に脳を興奮させることになる。心筋や骨格筋を直接刺激し、運動機能を亢進する働きがある。腎血管を拡張させ、尿細管での水分の再吸収を抑制するので利尿作用を現わす。また膀胱括約筋に取り付いてその作用を抑制しているアデノシンの働きを、カフェインが妨害するために頻尿になるという説もある。カフェインを摂取してから血中濃度が最高に達するまでは0.5〜2時間、血中消失半減期は4.5〜7時間である。
毒性
カフェインの半数致死量 (LD50) は一般に約200mg/kgと言われているが、人それぞれ、年齢やカフェイン分解酵素(CYPやモノアミンオキシダーゼ)の活量や肝機能に違いがあるため、5g〜10gが致死量と考えてよい。中毒症状発現量と致死量の差が狭く、生物に対する毒性は強いとされるが、ごく普通に身近に存在し、様々な用途や場面で人体に摂取されている。これは一部の生物や哺乳類に対する毒性は極めて強いが、人間に対しての毒性は低いためである(選択毒性)。また、コーヒーを飲んでいる人は肝癌や膵癌になりにくくなるという報告もある。
症例
コーヒー10杯や紅茶などを摂取(1.2g)後、激しい動悸や死ぬような強烈な不安に襲われ救急車を要請した。精神安定剤の投与で落ち着きを取り戻し、翌日回復した。
コーヒーやカフェイン飲料、カフェイン製剤を購入し毎日飲んでいると、ある晩パニック発作を起こし目が覚めた。次第に不安感が大きくなり、少しの物音などにすぐ反応するようになった。再度パニック発作を経験し医者を訪れたところ、医師の指示通りにカフェインの摂取を止め発作は起こらなくなった。
致死量を遥かに超えるカフェイン製剤を30g服用したが生還した。
ウィキペディア参照:https://ja.wikipedia.org/
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